音は鼓膜を振動させ、振動は中耳腔という部屋の中にある耳小骨に伝わり、さらに神経のある内耳へと伝達されます。
中耳炎はこの中耳腔という空洞に炎症性変化をきたした状態で、急性中耳炎、滲出性中耳炎、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎など異なった病態の疾患が含まれます。
このうち一般に小児によく認められるのが急性中耳炎と滲出性中耳炎です。
●関連サイト
風邪などで細菌・ウイルスが鼻の奥で増殖し耳管 (鼻と中耳腔をつなぐ空気抜きの管)を通じて耳に侵入し、炎症を起こしたものです。
つまり多くの場合、お風呂で耳に水が入ったなど直接耳に細菌が侵入したのが原因ではなく、鼻からの経路で感染が起こります。
生後3歳までに8割のお子様が1度は急性中耳炎になるといわれ、決して珍しい病気ではありません。
耳の痛み、発熱、耳を触る、機嫌が悪い、耳だれなどですが、典型的な症状が出ない場合もあります。
顕微鏡などを用いて鼓膜の様子を詳しく観察します。
鼓膜の発赤や、腫れ、中耳腔への膿の貯留、耳漏などが見られます。
細菌に対しては抗生物質、鼻のシロップなど薬の内服治療が中心となりますが、最近は細菌の薬剤耐性化もあり昔ほど単純には治りにくいことも多くなっています。
当院では中耳炎の状態により使用する抗生剤の種類や量、期間に特に注意を払っています。
また、鼻を何回も吸引する、ネブライザーを行うなど粘り強い治療も大切です。
特に注意したいのは最初の耳の痛みなどは数日のうちになくなりますが、鼓膜の状態は良くなっていないことも多く、滲出性中耳炎に移行することもありますので完全に鼓膜が正常化したことを耳鼻科で確認して治療を終了する必要があります。
一度急性中耳炎にかかってもその後繰り返さないお子様も多い半面、以後、鼻が汚くなるたびに急性中耳炎を繰り返す子もいます。原因としては低年齢(特に2歳以下)のために、まだ自分の免疫力が不十分で鼻についた細菌を押さえ込めないこと、兄弟や友達から細菌を受け取る機会が多いこと、原因となった細菌が耐性菌であることなどが考えられます。
そのようなお子様も年長になるにしたがい、中耳炎になる機会は減ってくることが多いので幼い時期を丁寧な治療で乗り切りましょう。
炎症などにより生じた液が鼓膜の内側にたまって長時間経過した状態が滲出性中耳炎です。
原因としては急性中耳炎と同様に細菌やウイルスの感染が影響していることが多く、また耳管という耳と鼻をつなぐ管による空気の入れ替えと排液がうまくいかないことが挙げられます。
鼓膜を顕微鏡でよく観察し、鼓膜の動きをみるティンパノグラムや聴力検査を行います。
鼻炎や副鼻腔炎など感染の原因がある場合には抗生剤治療を行い、アレルギー性鼻炎など耳管の働きを妨げる状態がある場合にはその治療を行います。
特に長期に治りにくい場合は耳に麻酔液をたらして痛みをなくし、鼓膜を切開し排液を行う、鼓膜換気チューブをいれる、など治療をステップアップしていく必要がある場合もあります。
長期にこの状態を放置すると鼓膜が薄くなる、真珠腫性中耳炎に移行するなど後遺症を認めたり、難聴が続くことが学習の妨げにもなりかねないので辛抱強く適切な治療を行うことが大切です。
中耳に炎症が続く状態で、炎症を繰り返したために鼓膜に穴があいていることもあります。
本来無菌であるべき鼓膜の内側に鼓膜の穴から細菌が感染すると耳だれをきたします。また本来自分が持っている聴力よりも聞こえが悪くなっている傾向があります。
抗生剤点耳やステロイド点耳を自宅で行います。しかし汚い耳だれがでたまま、いくら点耳を行っても改善しないことが多く、当院では耳を洗浄する、適切な薬を塗布するなどの外来処置を重要視しています。また再発や難聴の改善のために手術が望ましいこともありますが、その判断やタイミングの決定がとても重要ですのでご相談しながら病院の紹介を行います。
真珠腫と呼ばれる、本来鼓膜よりも皮膚側(外側)にあるべき白色の組織が鼓膜の内側に入り込んでしまったために起こる炎症です。
難聴や耳だれ、痛みなどが挙げられますが、自分では気付かないこともあります。
真珠腫が耳の奥の方に進んでいくと顔面神経麻痺やめまいの出現、神経性難聴の進行など重症化してしまう恐れがあります。
多くの場合手術による真珠腫の完全除去が必要になります。
このため治療には早期診断が重要で、顕微鏡による詳細な観察が必要です。
CTなどの追加検査や手術の判断をご相談しながら進めていきます。